1、風邪症候群
主に種々のウィルスによる急性上気道炎であり、発熱・のどの痛み・くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの上気道症状を呈し自然軽快する症候群ですが、下気道へ炎症が波及すると咳や痰も認めます。『風邪症候群』の直接的な治療法はなく、罹患期間を短縮させる方法もありませんが、諸症状に対し非ステロイド性抗炎症鎮痛剤・トラネキサム酸・鎮咳去痰剤などによる対症療法を行います。『風邪症候群』はウイルス感染症であるため、基本的には抗菌薬は不要ですが、細菌による二次感染を来した場合は抗菌薬を投与します。もし自然に軽快しない場合はアレルギー性疾患や肺炎など他の病気を疑うこともあります。
2、インフルエンザや新型コロナウィルス感染による上気道炎
インフルエンザウィルス感染症(いわゆるインフルエンザ)は、急激な発熱・とともに発症します。また同時に咳・鼻水などの上気道の症状や関節痛・筋肉痛が現れることもあります。
新型コロナウイルス感染症(いわゆる-19)は、新型コロナウイルスの感染から1~14日の潜伏期間ののち、発熱・喉の痛み・咳・痰などの呼吸器症状や、嗅覚や味覚異常といった症状が現れます。
インフルエンザと-19は発熱と呼吸器症状が類似しているため診断には、迅速キットが使用されることがあります。鼻から長細い棒を入れて鼻咽頭から検体を採取したあと、迅速抗原キットを用いてウイルスの有無をチェックします。結果は10〜15分ほどで判明します。
インフルエンザや新型コロナワクチンは、各ウイルス感染症の発症・感染・重症化を予防する効果があることが確認されております。また感染(※)が主な感染経路であるため、手洗い・うがい・マスク着用などの習慣がとても大切です。
当院では、迅速抗原キットを用意しておりますので、証明書が必要な場合やご希望がございましたら検査させていただきます。判定には10〜15分程度の時間を要します。判定が陽性の場合は各感染症に準じて内服処方などを致します。
※咳などで出た唾液のを吸い込んだり、が鼻や目などの粘膜に付着することで感染が成立する感染経路です
3、甲状腺疾患(バセドウ病・橋本病など)
『甲状腺疾患』の頻度は意外に高く、一般外来を受診する患者様の中にも約1割の頻度で『甲状腺疾患』がみつかると言われております。
『甲状腺疾患』を疑わせる症状は、バセドウ病などの甲状腺機能亢進症では動悸・多汗・暑がり・手のふるえ・食欲亢進・体重減少などがあります。一方、橋本病などの甲状腺機能低下症では寒がり・便秘・食思不振・体重増加・むくみ・関節痛・物忘れな
どを認めることがあります。
前述のような甲状腺機能異常症状や身体所見で甲状腺腫大を認めた場合は、甲状腺機能異常(亢進症あるいは低下症)などを疑い、諸検査を進めていきます。血液検査にて甲状腺刺激ホルモン(TSH)および甲状腺ホルモン(FT4・FT3)・甲状腺自己抗体などを測定し、超音波検査にて甲状腺の形態などをチェック致します。検査結果次第では病態に応じて甲状腺(内分泌科)専門医への紹介を致します。
4、貧血
『貧血』とは、血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態のことで、『貧血』になると低酸素による臓器や組織の機能障害が問題となります。
自覚症状としては、組織への供給不足つまり低酸素による症状(倦怠感・易疲労感、めまい・立ちくらみ、頭痛、眠気・集中力の低下など)と、低酸素を代償するために生じる生体反応(動悸・息切れ・過呼吸・頻脈など)があります。他覚所見としては、顔面(皮膚や眼球結膜)の蒼白、心雑音(機能性雑音)などがあります。慢性的に貧血を認めている場合には、比較的に自覚症状を認めにくいです。
『貧血』の原因は、①赤血球生成の低下(鉄・葉酸など素材の不足や造血ホルモンであるエリスロポエチンの不足)、②赤血球破壊の亢進(これを溶血とよびます)、③出血による赤血球の喪失のいずれかです。『貧血』は原因によって治療法が異なり、場合によっては赤血球輸血が考慮されることもあります。
※一過性の立ちくらみ(起立性低血圧)を脳貧血と呼ぶこともありますが、低血圧によるものは医学的には貧血とはまったく異なるものです。
5、頭痛
日本人の3 - 4人に1人(約3000万人)が『頭痛』を患っているといわれています。『頭痛』は原因によって分類され、基礎疾患(原因疾患)のない『頭痛』である一次性頭痛と、脳腫瘍・脳出血、頭部外傷などの原因疾患を有する二次性頭痛があります。
『頭痛』の多くが一次性頭痛の緊張性頭痛(ストレスが肩こりなどの筋収縮を起こし発症する『頭痛』)ですが、そのほか片頭痛(拍動性で嘔気/嘔吐や光/音過敏を伴う『頭痛』)や群発頭痛(片方の目の奥の激痛が繰り返し生じる『頭痛』)など様々な原因があります。また、まれに薬物乱用頭痛という鎮痛薬を頻繁に摂取することで発生する『頭痛』もあります。
大切なことは『頭痛』の中には緊急治療を要し、時に致死的となる疾患の初期症状のことがあることです。特に二次性頭痛の原因となるクモ膜下出血(今まで経験したことのないような強い『頭痛』)、髄膜炎(首が固くなって動かしにくく、頭を振ると悪化する『頭痛』)、脳出血(突発的に麻痺などの神経症状が出現する『頭痛』)などがあるので、注意が必要です。
治療法は『頭痛』の原因により様々です。一次性頭痛では急性期(発作中)の治療や慢性期の予防として各頭痛に対する薬物療法があります。二次性頭痛では『頭痛』の原因疾患治療が優先して行われ、原因疾患の治療が行われると『頭痛』も改善することが多いです。
6、めまい
『めまい』は、目が回るようなくらくらとした感覚の総称であり、「ふらつき」「たちくらみ」「血の気が引く感じ」「体が揺れる感じ」などと人によって訴える症状が異なります。『めまい』に伴いう症状として嘔気・頭痛・耳鳴り・難聴や脳神経症状(麻痺や呂律障害)を認めることがあり、原因検索の一助となります。
『めまい』の原因は多岐にわたりますが、多くは自律神経障害・良性発作性頭位変換性めまい・高血圧症・服用中の薬剤の副作用ですが、重症不整脈・初期の脳血管障害・突発性難聴などによることもあります。
『めまい』の治療法は原因よって異なるため、きちんと診断をしてもらうことが必要です。原因が特定できない場合は、漢方薬が効果を発揮することもあります。
※良性発作性頭位変換性めまい『良性発作性頭位変換性めまい』は 『めまい』の主な原因の一つです。この『良性発作性頭位変換性まい』は平衡感覚と聴覚に関与する内耳にある炭酸カルシウムの結晶であるの異常により起こると考えられている『めまい』です。特定の頭位をとるか頭位を変換する(頭の向きを変えたり、寝た状態から起きあがる等)ことで数秒から十数秒の回転性の『めまい』を生じ、安静にしていると治まるという特徴があります。時に嘔気や嘔吐を伴うことがあり、早急に対応してもらう必要があることもあります。
7、骨粗鬆症
『骨粗鬆症』とは、後天的に発生した骨密度の低下、または骨質の劣化により骨強度が低下したために、わずかな衝撃でも生じる骨折である性骨折などを引き起こしやすくなる病気や病態のことです。無症状の未受診者も含めると、本邦では推計で1100万人を超えるといわれております。高齢の女性に多く、患者の8割は女性で、60歳代女性の3人に1人、70歳代女性の2人に1人が骨粗鬆症の可能性があるといわれております。病初期には自覚症状は無く、骨折して初めて気付くケースも少なくありません。大腿骨(太ももの付け根)や椎体骨(背骨)の性骨折は、いわゆる高齢者の寝たきりなどの廃用症候群の主な原因の1つであり、これらの骨折によって日常生活活動や生活の質は著しく低下してしまいます。
『骨粗鬆症』の原因は大きく分けて2つあります。一つは原発性骨粗鬆症といい、閉経によるホルモン分泌の変化や加齢/老化に伴って発症するものです。もう一つは続発性骨粗鬆症といい、何らかの疾患やその治療のために長期にわたって薬物(ステロイドなど)使用を行った場合など、その背景に基礎疾患(糖尿病や副甲状腺機能亢進症など)があって発症するものです。
検査では骨密度測定/骨塩定量や骨代謝マーカーによる骨の代謝状態の評価を行います。治療方法は栄養バランス管理を基礎とし(カルシウム、ビタミンD、ビタミンK)および、各々の病態に合わせ薬物療法(骨代謝調整薬・骨形成促進薬・骨吸収抑制薬)を追加します。
8、不眠症
『不眠症』とは、入眠困難(寝付けない)、睡眠維持困難(眠り続けることができない)、早朝覚醒(朝早く目が覚めて、そのまま眠れない)などの不眠症状を認め、これらにより日中の機能障害が生じる睡眠障害です。『不眠症』の背後に他の疾患が隠れていることもあり、近年では高血圧や糖尿病などの生活習慣病と『不眠症』の間に関連性があることが知られています。日本では60歳以上では約3人に1人が睡眠障害に悩んでいることからも、誰であっても『不眠症』に陥る可能性があります。
治療薬として睡眠薬が用いられますが、定期的・長期的に用いた場合、薬物依存症や乱用につながることがあるため注意が必要です。
※睡眠薬と薬物依存依存症というとお酒やタバコなどを思いつくと思います。薬物依存には身体依存と精神依存があり、両者ともに長期的継続的に薬物を使用することで生じます。
睡眠薬の中には耐性を形成する薬剤があります。耐性とは、薬物を長期に続けて摂取するとその薬物に対する抵抗力ができてしまい、薬剤の効果が減弱することです。このような薬剤の慢性的な服薬を急に中止した場合に離脱症状と呼ばれる身体の症状が生じるのが身体依存で生理的依存とも呼ばれます。それに対して、精神依存とは薬物を習慣的に常用している場合に薬物に対する渇望や欲求が生じる状態です。たとえば「その薬がないと物足りない」「その薬なしではいらない」 などを認めることがあります。
大部分の睡眠薬には強い依存性はありませんが、睡眠薬の中には、長期の服用で身体依存が生じ、離脱症状として休薬すると不眠の一時的な悪化(これを性不眠とよびます)が生じることがあります。このような睡眠薬の休薬にあたっては、少しずつゆっくり減らしながら休薬する必要があります。また睡眠薬の中には認知機能低下(物忘れなど)・せん妄などの意識障害・記憶障害との関連性が指摘されている薬剤もあるため、特に高齢者では注意が必要です。
追加ですが、寝付きをよくするためにアルコールを飲む方もいらっしゃいます。しかしながら、むしろアルコールは夜間の睡眠の質を悪化させるため、結果的に不眠症を引き起こす要因になり逆効果となってしまいます。